自己肯定感の強い人は人間関係もうまくいく

「自己肯定」とは、自分のことを何でもかんでも正しいと判断する人ではありません。たいして実力や能力がないのに「自分はすごい人物だ」と過大評価することでもありません。特別に頭がいいわけでも、美人でもなく、何かの能力に飛び抜けて長けているわけでもない不完全な自分を「こんな自分だけど愛おしい」「自分がこの自分でよかった」と、心から抱きしめてあげることを「自己肯定」というのです。
 このように、そのままの自分を認め受け入れ、自分を尊重し、自己の価値を感じて自らの全存在を肯定する感覚を「自己肯定感」と呼びます。
 この「自己肯定感」と呼ばれるものと混同されやすいものに「自己効力感」や「全能感」(もしくは「万能感」)というものがありますが、これらはまったく違うものです。

「自己効力感」というのは、ある行動において自分は必要な行動をうまく遂すいこう行できる、何かを達成できるという、行動の結果についての期待や予期を指します。また「全能感」とは、何の根拠もなく「自分は何でもできる」という感覚を
意味します。子どもの発達段階において、しばしば見られる現象です。生まれたばかりの赤ん坊はこの感覚のなかにいて、実際には何もできないのに「泣く」ことで世話をしてくれるおとなを動かし、それによって自分が世界を動かしている気持ちになっているといわれています。
 対して「自己肯定感」とは、何かを持っているとか、何かができるとか、他者と比べて優れているかどうかなどで自分を評価するのではなく、そのままの自分を認める感覚のことです。「自己肯定感」の強い人は、自分の誤りや足りない部分を素直に認めたり、現実にそぐわないと思ったら、すぐに行動を改めることができます。失敗したり間違えても、必要以上にくよくよせず、「次はこうしよう」とこれからの糧かてとすることもできます。たとえ自分に嫌な欠点があったとしても目をそむけずに見つめることができます。
 このベースをつくるのは、その欲求や痛みに共感して受け止め、欠乏を充みたしてくれた他者の存在です。そうした人物との関係性の経験の積み重ねが、他者の痛みに共感し、「分かち合う」ことができる人間へと人を育て、自分の欲求だけを優先させたりせず、我慢することができるようになるのです。
 このように、親密な人間関係づくりに必要な能力を備えていますから、自然と周囲には安全な人が集まり、危険な人は遠ざけながら歩んでいくことができます。だから、「自己肯定感」の強い人は、人間関係もうまくいくのです。