本当に「自己受容」ができているか?

K:以前の特集で「自己受容」についてうかがって以降、私自身、自己受容がどれくらいできているんだろうと、いつも気にかかっています。なんとなく心が自己否定的というか、自分を責める感じになっているのに気がつくことがよくあります。
 今回、取り上げた3冊の本のなかの1冊には、その自己受容に関することが書かれていてとても興味深いと思いました。『すべての罪悪感は無用です――自分のために生きられないあなたに』という本です。著者は、アルコール依存症など、「依存症」という用語を提唱し、定着させた精神科医の斎藤学氏です。機能不全家族のなかで育った「アダルトチルドレン」という概念を日本にひろめた方でもあります。
 斎藤学氏は、この本のなかで「自己受容」という用語を使わず、「自己肯定」「自己肯定感」という用語を使って自己受容的なことを説明しているのが、分かりやすいと思いました(末尾に、これについての説明部分を抜粋して引用)。
齊藤:自己受容できている状態のことを、「自己肯定感」と表現すると、確かに分かりやすいですね。クライアントに説明するときにも、「自己肯定感」だとストレートに入っていきやすい感じがします。
K:「自己肯定感」と、「自己効力感」「全能感」などの違いについて説明してあるところも面白いなと思いました。

齊藤:そうですね。それらの違いについても、パーソナルトレーナーはしっかりと理解して、クライアントに説明できるほうがいいですね。

 パーソナルトレーニングを行ううえではクライアントに「自己効力感」を持ってもらうことがポイントの一つになりますが、自己受容ができていないと、自己効力感もうまく働かないのではないかと思います。
K:つまり、自己肯定感がベースにあってこそ、自己効力感もうまく機能するということですか?

齊藤:そう思います。人それぞれにさまざまな人生、体験がありますから、成功したことだけでなく、うまくいかなかったことも含め、そのまま受け入れることがベースとして大切ですね。
K:自分のなかの成功した部分やポジティブな部分だけしか受け入れない、認めないというのは、どうしても無理がありますね。