二十世紀の薬の三大発見

(前略)
 二十世紀の薬の三大発見は何といってもビタミン、抗性物質、副ふくじん ひ しつ腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)です。免めんえき疫に関しては、ワクチンの開発で多くの感染症が制御できるようになりました。では、二十一世紀の医学の進展に期待されるものは何でしょうか。
 昨今の大きな話題の一つは再生医療の分野です。駄目になった細胞や臓器を再生しようという試みで、いわば幹かんさいぼう細胞という種を植えて臓器にあたる茎くきや枝を育て、花を咲かせるといったやり方と言えるでしょう。この分野は日進月歩で、今世紀中にいくつかの疾患に応用されるはずです。私が思うに、もう一つ大きな期待が寄せられていつのは心の医学の進展です。二十一世紀は“心の世紀”でもあるのです。
 ヨーロッパではがんで死を宣告されると、フランスのルルドの泉に行き、願をかけるそうです。一億人が出かけたとすると、そのうち約百五十人はがんによる死から逃れられるのだと言います。ただの迷信だと言われるかもしれませんが、要するに“ 心の持ち方”が大切だということです。

(中略)

その科学的な裏付けはまだ解明されていません。もしそのメカニズムがわかれば、がんをはじめ多くの治療に役立ち、寿命をさらに延ばすこともできるはずです。心の動きが何を介して体に影響を与えるのか――。それを解明するのが二十一世紀の医学に期待されているのです。
 その一つのヒントは体の免疫系にあるのではないでしょうか。ここでは、心の世紀に大きく関与していると思われる免疫系に焦点を当ててみたいと思います。