21世紀は“心の世紀”

K:“心のフィットネス”について考える参考書としたい3冊のうちの1冊、『ウソだらけの健康常識――「不良」長寿のすすめ』の著者は、国際的にも著名な免疫学の研究者、奥村康氏(順天堂大学医学部名誉教授/アトピー疾患研究センター長)です。
 奥村氏は、この本の冒頭で、「21世紀は“心の世紀”」といっています(末尾に、本の冒頭部分を引用)。心の状態によって免疫の働きが大きく違ってくる。これが、ガンをはじめとするさまざまな病気の予防のカギになるということです。
齊藤:特に、ナチュラル・キラー(NK)細胞の働きですね。免疫システムのことが分かりやすく解説されていていい本だと思いますが、健康づくりに関する常識がかなりくつがえされる内容を含んでいるので、その意味でも面白い内容ですね。

K:私はこの奥村氏の本を読んで、先ほどあげた齊藤さんの特集のテーマが重要だとあらためて感じました。

身体的なフィットネスの指導をするとき、クライアント自身がネガティブな気持ちを持っていたり、自分をダメに思うような心の状態だったりすると、ナチュラル・キラー細胞の活性は下がってしまう可能性があるからです。
 齊藤さんは先の2つの特集で、クライアントの過ごしてきた人生や生活を尊重し、大切にすることをまずは基本にすべきだと指摘されていますが、それはクライアントの心を肯定的にサポートするということでもあるので、奥村氏がすすめているような健康づくりのあり方にもかなっているのではないかと思います。

齊藤:そうですね。クライアント自身が「運動不足の自分はダメ」「メタボな自分はダメ」というふうに、運動する動機のところで自分を否定的に思っていることが多いですから、自己受容的にサポートしていくのは、奥村氏がすすめるような心の持ち方につながると思いますね。
K:クライアントがセッションを気持ちよく続けていくためだけでなく、病気予防、健康長寿の観点からも、クライアントの人生や生活を肯定的にサポートしていくことが重要だということが、奥村氏の本を読むとよく分かります。

 

『ウソだらけの健康常識――「不良」長寿のすすめ』より