病気予防や 健康長寿につながる “心のフィットネス” とは?Part 1

クライアントの心をサポートするための大前提

 

本誌編集部・河辺(以下、K):この十数年の間に、パーソナルトレーニングが日本でも広がりを見せてきました。ここ数年は、ライザップのCM が注目されたことなどもあって、パーソナルトレーナーという職業もかなり認知されてきた感じがします。
 テレビでも、パーソナルトレーナーがよく登場するようになりましたし、指導する様子が紹介されることも珍しくなくなりました。しかし、その大半がやせることやお腹を引っ込めること、ボディメイクといった内容ですね。
齊藤:そうですね。いわゆるダイエットというか、体をしぼることも含め、全体的にボディメイクが中心に広がっていますね。

K:パーソナルトレーナーという職業の可能性でいえば、現在のボディメイク中心の状況から、さらにさまざまな需要に応えることのできるパーソナルのセッションが広がってほしいと、いつも思っています。

齊藤:ダイエットもボディメイクも、ひとつの柱としてパーソナルトレーニングの仕事が広がってきたのは業界として歓迎すべきことですが、パーソナルトレーニングがそうしたボディメイク的なことに限定されて社会から見られてしまうと、パーソナルトレーニングの可能性を狭めてしまうことにもつながるので、その意味ではパーソナルトレーニングがカバーできる領域をもっと広げられるように取り組んでいく必要があると思います。
K:そうでないともったいないですね。パーソナルトレーニングの仕事の領域はまだまだ開拓していくべきだと思いますね。人が健康的に生きていくためのサポートですから、アイデアしだいで多様なあり方が考えられますね。
齊藤:まさしく、そうですね。健康的に楽しく、そして充実した人生を送るためのサポートですから、既成概念としての運動やトレーニングの枠組みにとらわれず、クライアントの生活を豊かにする方向でサポートの内容を構築していくほうがいいですね。

K:今回、齊藤さんにお話をうかがいたいのは、その多様性の方向です。クライアントの健康寿命を伸ばすのに役立ち、しかも人生を豊かに、充実させていく方向のパーソナルトレーニングのあり方です。
 お話をうかがうための材料として3冊の本を選び、齊藤さんにはあらかじめ目を通しておいていただくようにしました。
 この3冊はいずれも心の健康、生き方に関するものですが、それが身体的な健康、健康的な生き方につながるものです。そして、この3冊に共通するのは、本誌の創刊の頃に齊藤さんからうかがった2つの特集のテーマと大きく関わると、私は考えています。

 その2つの特集とは、「パーソナルトレーナーとして身につけておきたい心の技術」(季刊『パーソナルトレーニング』第2号)、「自己受容が仕事を成功させるカギになる」(季刊『パーソナルトレーニング』第3号)です。
齊藤:送っていただいた3冊を読んで、その2つの特集のテーマと深くつながっていることがよく分かります。
K:「パーソナルトレーナーとして身につけておきたい心の技術」は、ごく簡単にいえば、健康不安を背景に「こうしないとダメですよ」と脅すような関係で指導するのはよくないということですね。「自己受容が仕事を成功させるカギになる」は、ダメな部分や欠点なども含め、まるごとの自分を受容することが、健康的な心の持ち方(生き方)の土台として重要だということですね。そのためには、パーソナルトレーナー自身も自己受容ができていることが大切であると……。
齊藤:クライアントのサポートをするうえで、そこが最も重要なところだと、今も考えています。