“今の自分”だからこそできる最高の料理

K:私自身は、フィットネス分野の出版の仕事にたずさわっていることもあって、食の安全や栄養、健康に関わることについて長年、興味を持ってみてきたのですが、木内さんもまた、職業柄、こうした問題には非常に詳しいし、新しい研究などについても常に勉強されていますね。その木内さんが選ぶ食材だから当然といえば当然といえるのかもしれないですが、体にいい食材選びを徹底していますね。調理器具についてもそうですが、クライアントの方たちは、料理だけでなく、一つひとつの食材選び、調理器具についても参考になりますね。

 

木内:食材については全国から取り寄せたりもしますし、近くに紀ノ国屋やクイーンズ伊勢丹など5店舗くらいあるので、それぞれのスーパーに買い出しに行ったりしています。クライアントの要望があれば、それらのスーパーにいっしょに買い出しに行ったりもします。

 

K:どの店でどのようなものを買うかも、生活様式をつくっていく重要な一つといえますね。パーソナルトレーニングの一環として、そういうサポートもするわけですね。料理についてもそうですが、木内さん自身が、トレーナーとして長年培ってきたものがあるからこそ、今のこのかたちがあるのだと強く感じます。

 
木内:栄養に関する勉強や、栄養指導に関しては長年やってきましたが、料理に関しては去年までは本格的にやったことがなかったので、その私にできるシンプルな料理が、パーソナルトレーナーとしてのオリジナリティになるのだと思っています。

 

K:今日は普段からよくつくられる食事の一つを実際につくっていただきました。

 

木内:前回にも説明したいろいろな具材を入れた納豆に、玄米ごはん、味噌汁、焼き魚(紅鮭の粕漬け、さばの西京漬)、大根のぬか漬け、そして海苔ですね。味噌汁に入っているわかめは、塩蔵されていない生のわかめです。

 

K:一般に市販されているものは塩蔵わかめが多いので、塩蔵されていない生のわかめは産地の近くならともかく、東京ではけっこう珍しいですね。

 

木内:焼き魚は、粕漬けや西京漬など、発酵食品に漬けたもので、料理は全般に発酵食品を主体に摂るようにしています。

 

K:発酵食品は、食文化の華という感じですね。日本はさまざまな発酵食品がありますが(納豆もまさに代表的な発酵食品の一つですね)、おいしさの深みや広がりがあるだけでなく、栄養的にも優れていますね。

 

木内:発酵食品のよさを生かした食事を、クライアントには提供したいと考えています。ぬか漬けも素晴らしい発酵食品なので、自分で漬けたものを出すようにしています。ぬか漬けは手間がかかるので自分で漬けるのは難しいと思っている
人が多いのですが、私が使っているのは、京都のメーカーが製造している超熟成ぬか床で、漬けるのが簡単なだけでなく、無農薬の玄米ぬかを使っていて、添加物も一切入っていないものです。


K:農薬を使った米を精米するときにできるぬかは、そのぬかに残留農薬が含まれることになるので、食の安全の観点からは、米ぬかに含まれる残留農薬にも気をつけたほうがいいといわれていますね。


木内:そうなんです。その点からも、いま私が使っているぬか床は安心して使えますし、食べられるおいしいぬか床なので、漬けものを洗わずにぬかをつけたまま皿に盛って、漬けものといっしょに食べるようにしています。

 

K:そうした食材選びも素晴らしいですね。私も撮影のときにそのぬか漬けとぬか床をいただいて、とてもおいしかった
です。ぬか漬けに関しては、1日1回は混ぜないといけないなどとよくいわれますが、木内さんのように忙しいと、そうし
た手間はなかなかかけられないのではないですか?

 

木内:私の場合、ぬか床を底の深い大きめのタッパーに入れ、冷蔵庫にいれておくのですが、2週間に1回混ぜるくらいでも大丈夫です。


K:それくらいだと、一人暮らしの人でもぬか漬けを漬けるのは無理がないですね。ぬか漬けをやってみたけど、手間がかけられないので失敗したという話をよく聞いてきましたが、木内さんの経験談を聴くと、ぬか漬けをやってみようとチャレンジする人が増えるのではないかという気がします。私自身も1回失敗した経験があるのですが、京都のそのメーカーの超熟成ぬか床を使ってチャレンジしてみたいという気になりました。