ケトジェニックダイエットで脂肪を落とす

キャット・ペリー Cat Perry

 体を引き締めようとトレーニングを行っているのに、体脂肪が一向に落ちていかない……。そんな経験をしている人は少なくないはずだ。体づくりのトレーニングを行う人にとって珍しくない問題だが、この解決に役立つ方法がある。しかも、徹底した食事制限とは無縁で、おいしく食べながら脂肪を落とすことができるという、願ってもない方法だ。
 それがここで取り上げる「ケトジェニックダイエット」といわれる食事法だ。脂質の摂取量を増やしながら体脂肪を落とし、カットをつけていくというこの食事法について、以下に説明していこう。

 

ケトジェニックダイエットとは
 ケトジェニックダイエットは全摂取エネルギーの約75%を脂質、20%をたんぱく質、5%を炭水化物から摂る食事法だ。ボディビルダーや筋肉づくりに熱心に取り組む人たちの間では、数十年前から実践する人たちもいたが、最近では人気スポーツのトップアスリートたちが取り入れ、注目を集めている。たとえばNBAのレブロン・ジェームズもその一人で、ビッグゲームの前には従来のようにパスタなど炭水化物をたくさん摂るカーボローディングを行うのでなく、ケトジェニックダイエットを実践しているという。脂質を大量に摂るケトジェニックダイエットを行っていると、炭水化物ではなく脂質が
エネルギー源として使われるようになるからだ。 摂取した脂質がエネルギー源として燃焼されるということは、体脂肪として蓄えられにくくなるということでもある。

 フィギュアオリンピア2回優勝のエリン・スターンは、体づくりをめざす人のためのケトジェニックダイエットの実践法を紹介した本を出している(『The Bodybuilder’s Kitchen』)。スターンのアドバイスにしたがって、より健康的な方法でケトジェニックダイエットを実践していくことができる。アボカドやココナッツオイルといった健康的な脂質を含む食品をたくさん摂るとともに、ベーコンや肉の脂身といった飽和脂肪酸も役立てる食事プランだ。飽和脂肪酸はホルモンの生成や筋肉をつくるために欠かせない重要な役割を持つからだ。
 そして、炭水化物の摂取量をサイクルを設けて増減するカーボサイクリングを取り入れることも成果につながる可能性があると、スターンはいう。
「週末に炭水化物の摂取量を増やす方法を2週間程度取り入れると、代謝を上げ、貯蔵エネルギーを補充する効果が得られる」とスターンはいう。ただし、ケトジェニックダイエットでは健康的な脂質を重点的に摂り、炭水化物の摂取量は最小限に抑えるので、カーボサイクリングで炭水化物の摂取量を増やす間は脂質の摂取量を抑えることになる。

 

ケトジェニックダイエットによる効果
 ケトジェニックダイエットは難しくない。脂質の摂取量を増やし、全摂取エネルギーの60〜80%を脂質から摂るようにすればいいのだ。
 脂質の摂取量を増やす理由は、エネルギー源として最初に脂質が燃焼されれば、体脂肪として貯蔵されずにすむからだ。さらに、脂質はエネルギー量が大きいので、脂質をエネルギー源として使うことに体が順応してくれば、より多くのエネルギー源が使えるようになる。脂質の摂取源には多価不飽和脂肪酸(アボカドなど)、単価不飽和脂肪酸、そして飽和脂肪酸(ココナッツオイルなど)を摂るようにする。「鮭やますといった冷水域に住む魚をたくさん食べることになる」とスターンはいう。「それにココナッツオイルや牛肉の脂身も食べて、脂質の必要量をしっかり摂るよう
にする」
 肉の脂身も食べていいなど、すごいダイエット法に思えるだろう。だが、注意すべき点もある。三大栄養素の摂取比率を変え、エネルギー源を炭水化物から脂質に切り替えると、最初はだるさにおそわれるかもしれない。これは「ケトフル(keto flu)」といわれ、ケトジェニックダイエットを始めた初期に起こりやすい症状だ。ただし個人差があり、起きない人もいる。めまいや体の痛み、イライラするなどが典型的な症状で、7〜14日程度、脱力感におそわれ、成果も得られない状態が続く(ただし、ケトジェニックダイエットを始める前から炭水化物が少なめの食事を摂っている人は、この症状にお
そわれにくい可能性がある。炭水化物の摂取量が少ない状態に体がすでに適応しているからだ)。

ケトフルの状態を脱したら、「ケトーシス」といわれる状態に入ったことになる。脂質をエネルギーとして使う状態に体が適応したということで、ケトジェニックダイエットの効果が得られるようになる。
 

 最後にいくつかアドバイスをあげておこう。まず、試験紙を使って朝に、尿中のケトン体レベルを調べるようにしよう(試験紙は薬局やインターネットなどで購入できる)。こうして体内のケトン体レベルを測定することで、炭水化物やたんぱく質を摂りすぎず、脂質を十分に摂っていることを確認するといい。