タフなトレーニングをやり抜くカギは、まずは脳を適切に鍛えること
ショーン・ドネリー Shawn Donnelly
1 プロセスに集中する
たいていの人は結果を重視するのに対し、非常に有能で大きな成果をあげている人たちは、結果を導く過程を重視する。
「頭は一度に一つのことにしか集中できない」とスポーツ心理学者のジェイソン・セルクはいう。「結果に焦点を当てていれば、結果を導く一連の段階、つまりプロセスに集中できなくなるということだ」
2 成功をビジュアライズする
ビジュアライゼーションはパフォーマンス心理学で最高のツールとされている手段だ。「1分のビジュアライゼーション
は7分の身体トレーニングと同等の効果をもたらすことが、科学的に確認されている」とセルクはいう。
いいパフォーマンスをしている姿を2〜10秒の短い時間で、現実に自分がそうしているように具体的にありありと思い描
くようにしてみよう。これをトレーニングや試合前に毎回行う。スタートの時点から順を追って一連のプロセスをイメー
ジし、最後に結果を思い描く。成功した結果だけをイメージするのでなく、そこに向かってどのように進み、障害を乗り
越え、成功にいたったかを、現実そのままを見ているように具体的にありありと思い描くのがポイントだ。
3 呼吸をコントロールする
試合前やハードなトレーニングを始める前に、心臓がドキドキして心拍数が上がるのはまったくふつうのことだ。だが、「残念ながら、それはパフォーマンスにマイナスの影響を与えてしまう」とセルクはいう。
心拍数をコントロールする(さらに「イップス」といわれる、過度の緊張が神経に影響して、体を正常に動かせなくなる
状態を避ける)ために、次のテクニックを使うようにしよう。
まず6秒で息を吸い、2秒止めてから、7秒で息を吐く。これを試合前、試合中を通じて何度でも行う。また、緊張して
いると感じたときにいつでも行うようにしよう。
4 ポジティブに話す
期待理論*によると、何であれ自分がその実現に価値をおき、集中することで大きな展開が生まれるとされている。
「このことからいえるのは、自分に対して非常にポジティブな話し方を身につけたほうがいいということだ」とセルクはいう。
「重要なのは、たとえ冗談であっても、自分に対して否定的な話し方をしないことだ。もしうまくいかないことがあっても、『自分はうまくできない』と考えるのでなく、『うまくなるように学んでいるところだ』と考えるようにする」
*モチベーション理論の一つで、人がどのように動機づけられ、行動の選択・持続がなされるのかというメカニズムを理論
化したもの。
5 成功するための象徴的な言葉をつくる
自分の強みと目標に集中できる象徴的な言葉をつくり、それを常に口にするようにしよう。 その言葉をつくる作業は、
それがすでに実現しているとイメージして行うこと。「正しい方向づけで自分に何度も語りかけるほど、信じる度合いが
深まる」とセルクはいう。「象徴的な言葉と信じる心がつながったら、パフォーマンスは確実に高まってくる」