骨が出す重要なメッセージ物質

腎臓はEPO のほかにもさまざまなメッセージ物質を放出していますし、他の臓器と共有しているネットワークは命に関わる重要なものばかりなので、腎臓に負担をかけないような食事や生活の仕方、腎臓の機能をできるだけいい状態に保つような適度な運動を行うことが大切だと、第1集「“腎臓”が寿命を決める」を見て強く感じました。
 運動にも関わる要素としてぜひ知っておきたいのが、骨が出している数種類のメッセージ物質です。記憶力や筋力、免疫力、精力などに関わるメッセージ物質の解説について、『人体~神秘の巨大ネットワーク』2から、以下に引用します。

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「骨が果たす役割は、単に体を支えるだけではありません。全身に向けてさまざまなメッセージ物質を送る働きもしているのです。骨が弱ると、それに伴って骨からのメッセージも減ってしまい、全身の若さが失われていってしまうのです」
 最新の研究から、骨が全身の臓器に送り届けるメッセージ物質が、記憶力や免疫力、筋力、精力などに関わることが明らかになってきたというのだ。なかでも、いま大きく注目されているのは、記憶力を高めるメッセージ物質だ。
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 骨が脳に向けて発信し、記憶力強化を促すメッセージ物質は、「オステオカルシン」という10 万分の1ミリメートル程度の小さなたんぱく質だ。

(中略)

骨でつくられたオステオカルシンは血管内に放出されると、血流に乗って脳に運ばれ、海馬に到達して受容体と結合する。そこから海馬も神経細胞野の中にメッセージが送り込まれる。そのメッセージは「記憶力をアップせよ!」というものだった。

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「骨はサバイバル(生き残り)のためのツールです」とカールセン博士は解説する。「骨がつくられたのは、動物が海中から出て陸の上で走ったりすることを可能にするためです。記憶力もサバイバルに関係しています。捕食者が1時間前にどこにいたのか、食料を昨日どこで見つけたのかを覚えておくために生み出されました。骨は運動能力にも関わっていますが、骨によるこれらの機能は、進化論的な見方をすれば、骨がサバイバルのためのツールであることを物語っているのです」
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 オステオカルシンは筋肉におけるエネルギー利用を増進するメッセージを送り、筋力をアップさせていると考えられる。

骨が放出するオステオポンチンのメッセージは「免疫力をアップせよ!」というものだった。このメッセージが造血幹細胞に届くと、造血幹細胞は活性化し、免疫細胞への分化が促進され、細菌やウイルスから体を守ることができる。骨が出すメッセージ物質によって、免疫力がアップするのだ。
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 このように、オステオカルシンがないと、オスのマウスの生殖機能、つまり精力が明らかに低下することが示されている。骨は、メッセージ物質によって精力もコントロールしているのだ。