「軽い負荷のジャンプスクワット」と 「高重量スクワット」 トレーニング効果はどちらにある?

高負荷のスクワットと軽負荷のジャンプスクワットのトレーニング介入を行った場合、下肢筋力、下肢パワーに及ぼす効果にはどういった違いがあるのか。それぞれの特徴について比較検討した。

 

近年、レジスタンストレーニングの挙上速度を基準としたトレーニング法(Velocity Based Training:VBT)が紹介され、負荷を基準としたこれまでの伝統的なレジスタンストレーニングと比較して、高い筋力やパワーの向上効果が報告されています。これらの結果には、ニュートンの第2法則(力=質量×加速度)が関与していると考えられ、仮に質量が同じであっても、加速度が大きくなれば発揮する力は増大することから、軽負荷のレジスタンストレーニングにおいても挙上重量を最大に発揮することにより、筋力やパワーを有意に増大させる可能性があります。

 

大学ラグビー部に所属する男子選手24 名を対象に、無作為にスクワット群(SQ 群:12名)とジャンプスクワット群(JSQ 群:12 名)に振り分け、前者はスクワット最大挙上重量(1RM)の80%の負荷で6回×5セット、後者は1RM の30%の負荷で3回×5セット、両群ともにセット間の休息時間は3分とし、週3回、3週間にわたってトレーニングを実施しました。介入前後にはSQ 1RM、30%及び80 %1RM の負荷で行うJSQ パワーをGymAware(Kinetic Performance 社製)を用いて測定しました。
 その結果、SQ 1RM、30%1RM JSQ 平均パワーは、両群とも介入後に有意に向上しました。80 %1RMJSQ平均パワーは、SQ 群がJSQ 群に比べて介入後に有意に向上しました。また、80 % 1RMJSQ の動作初期のパワーを示す1stピークパワーは、SQ 群がJSQ 群と比較して介入後に有意に向上しました。 

以上の点から、挙上速度が低速なSQ 1RM では両群で介入後に有意に向上したことは、高負荷でのSQと軽負荷でのJSQトレーニングの両者に下肢筋力の向上をもたらす効果がある可能性があることが示唆されます。
一方で、股関節、膝関節を深く屈曲させた姿勢から爆発的な伸展を伴うJSQにおいては、負荷条件における特異性がトレーニング効果に影響を及ぼしたと考えられます。特に80%1RM の1st ピークパワーは、SQ 群がJSQ群と比較して介入後に有意に向上したことから、高負荷でのジャンプスクワットでは動き出しの局面の改善に高負荷領域のトレーニングが必要であり、動作終盤には軽負荷領域でのパワーが関与していると思われます。したがって、このような能力の改善にはレジスタンストレーニングでは単一の負荷でトレーニングを行うより、高負荷から軽負荷までの複合的負荷を用いたバリスティックトレーニングが有効であると考えられます。