「タンパク質の合成と分解」という 動的な平衡状態が生きているということ

 筋肉づくりのためのトレーニングと食事でよく出てくる解説が、体内の異化作用(タンパク質を分解する働き)より、同化作用(タンパク質を合成する働き)が上まわるようにするということです。
「いくら筋力トレーニングを行っても、摂取したタンパク質やエネルギーが不十分だと、筋肉が分解されてエネルギーとして使われてしまい、筋肉づくりが効果的に進まない」といった内容だったと思います。
 しかし、『新版 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』を読むと、「タンパク質の合成と分解」についてまったく違う観点で説明されていることに驚きました。まず、この本のタイトルになっている「動的平衡」についてですが、あとがき(「新書化に寄せて」)で、次のように説明しています。
「動的平衡とは、合成と分解、酸化と還元、切断と結合など、相矛盾する逆反応が絶えず繰り返されることによって、秩序が維持され、更新されている状況を指す生物学用語で、私が生物学者として生命を捉えるとき、生命を生命たらしめる最も重要な特性だと考えるものである」
「動的平衡とは、“生命が変わらないために変わり続けている”ことでもある」

つまり、「タンパク質の合成と分解」という動的平衡の状態が、生命活動そのものだということで、エネルギー不足だからタンパク質の分解(異化作用)が起こるわけではないということです。
 さらに、『新版 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』のなかでは、「生命活動とはアミノ酸の並べ替え」という小見出しで、次のように解説しています。