疲れがたまるほど、老化も早まる

年齢を重ねていくにつれても「疲労回復物質FR」の反応は落ちてきます。若い頃に比べ「疲れやすくなった」と感じるのは、「疲労回復物質FR」による細胞の修復が遅くなっているのが理由のひとつなのです。
 

ちなみに疲れと老化の間には、他にも深い関連があります。よく「年を取って体力がなくなってきた」といいますが、体力の定義というのはこれまであいまいで、いったい何が体力なのか、特定できていませんでした。しかし近年の研究で、自律神経の働きを示す指標である「パワー値」と、いわゆる体力はほぼイコールであることがわかってきました。パワー値は、加齢に伴ってその値が減少します。10 代のころを100とすると、60 代のパワー値はだいたい25。単純化していえば、60 歳を超えれば若いころの4倍、疲れやすくなるわけです。このように、加齢から自律神経の働きが落ちてしまうと、身体をコントロールする能力が鈍り、若いころは苦もなくできていた所作を行うのに何倍もの労力がかかります。例えばジョギングをすると、発汗や呼吸の乱れ、血圧や心拍の上昇といった症状が、今までよりも早く表れてきます。そして自律神経の機能が低下しすぐに疲れてしまいます。
 

夏場には、若者よりも高齢者のほうが圧倒的に熱中症になりやすいですが、それもパワー値が落ちたからです。同じ高温の環境にいても、パワー値が低い高齢者の自律神経のほうが先に参ってしまい、汗をかいて体外へと熱を放出するといったようなコントロールがうまくいかなくなってしまうのです。
 

また、疲れている人はなんだか老けて見えるものですが、これはただの表情の問題ではなく、実際に老化が進行している証です。疲れと老化というのは、メカニズムとしてまったく同じで、双方とも活性酸素による細胞への攻撃が原因です。あえて分けるなら、活性酸素で一時的に細胞が傷つくのが疲れ、そしてその傷が癒えないまま傷跡になるのが老化です。

 

「隠れ疲労」の状態では、活性酸素によってつけられた傷が「疲労回復物質FR」の働きで癒える前に、また新たな活性酸素が発生し、細胞を傷つけます。傷というのは深いほど残りやすくなりますから、疲れを溜め込むほど老化のペースが早まることになります。 突然死、過労死、大病、老化……。「隠れ疲労」によって人生を損なうリスクがいかに高まるか、おわかりいただけたでしょうか。