「ゆらぎ」で疲れにくい環境を作ることができる

自然環境に代表される「ゆらぎ」には、疲労回復効果があります。ストレスが多い環境下では、自律神経のうち、緊張や興奮時に働く交感神経がつねに優位になっています。ところが、人は「ゆらぎ」の環境に置かれると心地よさを感じ、交感神経に代わって心身を休息モードに切り替える副交感神経が優位になります。そのため、ストレスや疲労が軽減することがわかっています。

 


 

 実際の生活においても私たちは疲れてくると、無意識のうちに「ゆらぎ」

 

を求めます。

 

 たとえば、自動車を長時間運転していると、ときどき窓を開けたくなります。それは、一定に保たれた車内環境に「ゆらぎ」をとりいれ、リラックスして疲れを軽くしたいからです。また、教会などにあるステンドグラスは、太陽光に木漏れ日のような「ゆらぎ」を与える作用がありますが、そこには「ゆらぎ」で疲れを癒したいという先達の知恵が生きています。

 

改めて考えてみると、かつて、日本人は「ゆらぎ」を大切にする暮らしをしていました。

 

 国土の70%近くを森林が占める日本列島は四季の変化に富む気候に恵まれ、「ゆらぎ」に満ちています。日本家屋は木造で、小さな庭で自然を楽しみ、ふすまを多用することで風や光を巧みに取り入れる造りとなっており、年中行事で自然や四季の変化を楽しむ文化が根づいています。

 

 しかし、いまの日本人は過労死の危険性が社会問題になるほど、疲れが溜まる環境に生きています。「ゆらぎ」のない現代的ビルのオフィス空間で長時間働き、理想的な「ゆらぎ」を持つ日本家屋を捨てて自然とは隔絶された住宅に暮らす生活は、疲れを溜め込む一因になります。そろそろ違ったライフスタイルを考えるべきときです。