睡眠中は疲労回復因子FRの働きが疲労因子FFを上回る

 睡眠の重要性と睡眠障害の現実に関連して、睡眠が具体的にどのような仕組みで疲れを回復させるのかをみていきましょう。

 

 ほ乳類には、ネズミのように夜間に活動して日中に休む種が多いのですが、ヒトは日中に活動して夜間に休む昼行性動物です。第二章で詳述したように、日中に運動や仕事をすると大量の活性酸素が発生し、細胞の酸化と損傷が進んで脳疲労が起こります。また、日中に浴びる紫外線も活性酸素の発生を促します。

 

 そこで生じるのが、疲労因子FFです。疲労因子FF が生じると、それに反応して疲労回復因子FR が増えてきて、酸化・損傷された細胞の修復を始めます。ところが疲労が蓄積すると、活性酸素と疲労因子FF が出続けて疲労回復因子FR によるリカバーが追いつかなくなります。1日中働き続けて夜になると疲れが溜まったように感じるのは、疲労回復因子FR による回復が追いつかないためです。

 

 

 

一方、眠っている間は大脳も自律神経も昼間の重労働からしばし解放されています。活発な運動で酸素とエネルギーをたくさん使うことがなく、活性酸素の発生とそれによる細胞の酸化と損傷も抑えられます。また、夜間は日光が降り注がないので紫外線による酸化もストップします。

 

 まとめると、日中に激しく活動しても良質な睡眠がとれていれば、疲労因子FF による酸化・損傷を回復させるに十分な疲労回復因子FR が分泌されるため、脳の疲労は回復します。逆に睡眠時間を削って働いていると、疲労因子FF による酸化・損傷を完全にリカバーするだけの疲労回復因子FR分泌されず、脳疲労が回復しにくくなると言えます。