イミダペプチドは持続的に抗酸化作用が働く

緑黄色野菜や果物に含まれているビタミンA、C、E のいわゆる「ビタミンエース」、植物の苦みなどの成分である「ポリフェノール」のように、活性酸素に対抗する抗酸化作用を持つものはイミダペプチド以外にもあります。鶏の胸肉などからイミダペプチドをとらなくても、ビタミンエースやポリフェノールのように抗酸化力を持つ成分を取り入れると、脳の疲労は果たして同じように軽減できるのでしょうか。
 答えは残念ながら「ノー」です。イミダペプチドと、ビタミンエースやポリフェノールなどほかの抗酸化成分とでは、酸化ストレスに対抗し続ける持続力がかなり違うことがわかっています。第二章でふれたように、活性酸素の一部は、100 万分の1秒単位で発生しては消滅しますが、疲労したときには、発生し続けては一瞬で細胞を酸化させています。そのため、終わりのみえないモグラたたきをするように、現れては消え、消えては現れてくる活性酸素を無力化し続ける必要があります。

抗酸化成分の性質は多種多様ですが、1時間もすると効果がなくなるものが大半だと考えられています。ことにポリフェノールの多くは水に溶ける水溶性であり、体内に溜めることができません。
 たとえば、赤ワインやブルーベリーなどに含まれるポリフェノールの一種であるアントシアニンはイミダペプチドよりも抗酸化力が強いので、一時的には活性酸素による酸化ストレスは抑えられます。しかしながらアントシアニンが消耗して減ってくると、処理されない活性酸素が増えて、脳で酸化ストレスが高まり、脳疲労をもたらすことになります。

また、活性酸素が発生しているのは脳内だけではありません。体内のさまざまなところで活性酸素は暴れていますが、アントシアニンなど抗酸化成分の多くは部位を選ぶことなく、抗酸化作用を発揮します。それはそれでからだにとっては有益ではありますが、血液脳関門を通って肝心の脳に到達する前にその作用が浪費されているので、とった抗酸化成分のうちで脳に届いて抗疲労効果をもたらすのはごく一部に過ぎなくなります。
 その点、イミダペプチドはアミノ酸に分化された状態で、摂取した分だけ脳内で活性酸素に対抗し続けることができるという際立った特徴があります。