イミダペプチドの抗酸化作用が抗疲労効果をもたらす

では、鶏の胸肉などに含まれるイミダペプチドは、どのようなメカニズムで抗疲労効果を発揮するのでしょうか。
繰り返しますが、疲労を引き起こす原因となるのは、活性酸素による酸化ストレスです。イミダペプチドには酸化ストレスを軽減する抗酸化作用があり、そのことが疲労を軽減する効果をもたらすことが明らかになりました。

専門的な表現になりますが、「イミダペプチドとは、イミゾール基を有するアミノ酸結合体の総称」です。摂取したイミダペプチドは、消化されて小腸から体内に吸収されますが、血液中や肝臓で「ヒスチジン」や「β ベータ-アラニン」という2種類のアミノ酸に分解されます。この2種類のアミノ酸は骨格筋や脳の組織に運ばれ、そこで再びイミダペプチドに合成(再合成)されるという特性があります。

 

骨格筋や脳は日ごろの活動により活性酸素が発生しやすく疲労しやすい部位ですが、イミダペプチドはその骨格筋や脳で再合成されてその場で抗酸化作用を発揮します。
イミダペプチドはどの動物でも、疲労が蓄積しやすい部位に豊富に含まれています。そのため、渡り鳥や鶏なら羽ばたくときに使われる胸肉に、マグロやカツオなら尾びれに近い筋肉に多いのです。

私たちの脳にはつねに全血液の20%ほどが巡っていますが、大事な脳を守るために脳に血液を送る途中には危険物をあらかじめ排除する関所があります。これを「血液脳関門(Blood Brain Barrier:BBB)」と呼びます。
これは脳内の血管の内側を覆う血管内皮細胞で構成されていて、全長600㎞ほどある脳内の血管の壁を覆いつくしているとされます。前述のヒスチジンとβ-アラニンはともに人体に有益なアミノ酸であり、この血液脳関門を通過します。そして脳内にある酵素の働きによって再合成されてイミダペプチドとなるのです。

 

しかし、ヒスチジンとβ-アラニンはいずれも単独では抗酸化作用がありません。再合成でイミダペプチドとなって初めて抗酸化作用を発揮する仕組みであるため、脳の疲れにピンポイントで働くと言えます。そこには、限られた栄養成分を疲労軽減のためにいかに効果的に使うかという、生き物の知恵が隠されているのだと思えるのです。