疲労因子FFとは

脳と体で処理しきれない活性酸素が発生することが「疲労」の原因になりますが、活性酸素が脳に直接的に「疲労感」をもたらすわけではありません。疲労感をもたらすのは、疲労因子の「ファティーグ・ファクター(Fatigue Factor)」と呼ばれるタンパク質の働きによります。「ファティーグ」とは疲労という意味で、英文の頭文字から「FF」と呼ばれます。ここで
はわかりやすいように、「疲労因子FF」と呼びましょう。

 

疲労因子FFとは特定の物質を指すのではなく、機能性を持つタンパク質の総称です。脳内の神経細胞などが活性酸素で酸化されると、細胞内から老廃物の一種が排はいせつ泄されます。ケガをしたときに皮膚の傷口から体液が漏れ出るようなイメージです。その老廃物の増加がシグナルとなり、血液中などに疲労因子FF が増加します。

そして、「活性酸素が細胞を攻撃して疲労因子FF が増えてきた」という情報が、大脳の眼窩前頭野という部位に伝わって疲労感を表出するようになるのです。

 

疲労因子FF の存在を明らかにしたのは、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の近藤博教授です。2008年に国際疲労学会で最初の報告がありました。近藤教授の実験結果により、「疲労因子FFが疲労感をもたらしていること」、そして、「疲労とは、疲労因子FF が体内に多く溜まっている状態」だということが判明しました。

 

この結果は疲労の研究にとって画期的な発見となりました。これまで疲労を定量化するにあたり、何を目安に「疲労度」を測定するべきかが明らかになっていませんでした。ところがこの発見で、血液を採取して疲労因子FFの量をチェックし、通常時と比べることにより、たとえ本人に疲れているという自覚がなくても、疲労の程度をリアルタイムにモニターできるようになったのです。