疲れの直接の原因になるのは活性酸素である

 乳酸が疲労をもたらす犯人ではないとしたら、何が疲労の原因となるのでしょうか。それは脳内で神経細胞を攻撃している「活性酸素」です。

 

 活性酸素については近年、老化や生活習慣病、シミ・シワ、白内障などの原因になるということがわかっており、どこかで耳にしたことがあると思います。活性酸素とは、「呼吸で取り入れた酸素が体内で変化して、ほかの物質を酸化させる力が強くなった酸素の「総称」を言い、具体的には、「スーパーオキシド」「ヒドロキシルラジカル」「過酸化水素」「一重項酸素」の4種類があるとされています。

 

 まず知っておきたいのは、呼吸で取り入れる酸素のうち、1~2%はこの活性酸素に変化するということです。呼吸をしている限り活性酸素の発生は止められないため、人体には活性酸素の作用を抑え込む安全機能が備わっています。それが「抗酸化酵素」です。

 

活性酸素による酸化をブロックする働きを持つ酵素群のことを言い、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどがあります。

 

 活性酸素はほかの物質から電子を奪い、まずは「スーパーオキシド」になります。このスーパーオキシドは強い酸化力を持ちますが、抗酸化酵素であるSODによって「過酸化水素」に分解されます。そして「過酸化水素」はカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼといった抗酸化酵素によって水と酸素などに分解され、体内から除去されます。

 

 このように、発生する活性酸素を抗酸化酵素が100%無力化してくれたら、体には何のダメージも残らないことになります。しかしながら、抗酸化酵素の働きは加齢とともに低下し、活性酸素に対する防御力も年々低下していきます。さらに、仕事や運動などの疲れを感じる活動で大量のエネルギーを使うと、酸素の消費量が増えて活性酸素が大量に発生します。すると、抗酸化酵素

 

の防御力を上回る活性酸素が出現し、それが細胞や遺伝子を傷つけてしまうのです。

 

さきほど、仕事や運動の活動時には多くの酸素を取り込み、同時に活性酸素が大量発生すると述べました。そのときに体内で起こっている現象を詳しく解説しましょう。 

 

 筋肉などの細胞の細胞核に含まれている核酸という物質は、分解と合成を繰り返す新陳代謝をしています。分解された核酸はプリン体→ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸と変化して体外へ排出されます。ところが、運動をすると核酸の新陳代謝が活発になりすぎて核酸とプリン体が異常に増え、一時的に処理されないヒポキサンチンが滞ります。このヒポキサンチンが酵素で代謝されるときにスーパーオキシドが出現するのです。

 

 適度な運動は健康にプラスですが、スポーツ選手のように過度なトレーニングを続けていると活性酸素の攻撃につねにさらされるようになります。その結果、細胞の機能低下が続くと考えられます。