眼精疲労の原因は自律神経にある

脳に入る情報の90%近くは、目を介して視覚情報として入ってきます。IT を活用しているビジネスパーソンには、デスクワークで1日中パソコンやタブレット端末とにらめっこするのがルーティンになっている人も少なくないでしょう。すると頻繁に目の疲労感を覚えるはずですが、この疲労の原因も目の細胞の損傷によるものではなく、自律神経の疲労です。

しばらく休むと回復するようなら案じる必要はないと思われますが、かすみ、充血、だるさといった目の症状に加えて、倦怠感や頭痛など、ほかの部位にも症状が出てくるようなら、かなり疲労が蓄積していると考えるべきです。なぜなら眼精疲労に陥っている可能性もあるからです。


医学的には、疲れ目と眼精疲労は区別されています。休息をとれば回復する場合が「疲れ目」で、休息や睡眠をとっても目の痛みやかすみ、充血、まぶしさなどに加えて頭痛、肩こり、吐き気、めまいなどの症状が残る、一時的に回復しても症状がぶり返して治療が必要な状態を「眼精疲労」と言います。


目はパソコンをみるときのように近くにもピントが合いますし、遠くの山々にもピントを合わせることができます。その自由自在のピント合わせを可能にしているのが、目のレンズに相当する、水晶体の両端についた、毛様体筋という筋肉です。毛様体筋が縮むとレンズが厚くなって近くにピントが合い、緩むとレンズが薄くなって遠くにピントが合います。

 

こうしたピント合わせをコントロールしているのが、自律神経です。交感神経が優位になると毛様体が緩み、レンズが薄くなって遠くにピントが合います。また、副交感神経が優位になると毛様体筋が縮み、レンズが厚くなって近くにピントが合います。 自律神経と目のピント合わせの基本的な関係は、ヒトが野生の環境に暮らしているときに確立した仕組みと考えられています。交感神経は緊張時や攻撃時に優位となり、副交感神経は弛緩時や休息時に優位になります。

 

ヒトが野生動物と暮らしていたころ、いち早く外敵や獲物を発見するために緊張時は交感神経が優位になって遠くに焦点を合わせていました。それ以外の、緊張して遠くを監視する必要がないときは副交感神経が優位になって休息し、食べ物や仲間など近くにピントを合わせていたと推測されます。ゆえに、目の解剖学的構造も交感神経優位では遠くに焦点が合うように設計されているわけです。

 

しかしながら、眼精疲労に悩んでいるビジネスパーソンは、野生の環境で暮らしているときとは正反対の状況に身を置いています。仕事をしているときは緊張感で交感神経が優位になっています。交感神経は遠くに焦点を合わせようとしますが、デスクワークではパソコンやタブレット端末など近くに焦点を合わせる必要があります。近くにピントを合わせるときは本来、副交感神経が優位になるはずのため、自律神経の作用に矛盾が生じます。そんな状態が長く続くと自律神経の中枢が疲弊し、それが眼精疲労として表出します。眼精疲労とは「自律神経を混乱させて、疲弊させるような真似はやめなさい」という自律神経の中枢からのアラームにほかなりません。