疲労を科学することとは

「疲労」と聞くと「ガス欠」、すなわち車のガソリンがゼロになるようにエネルギーが枯渇するイメージを持っている人も多いと思います。また、「仕事や運動をすればエネルギーを消費するから体が疲れるのは当たり前」と思っている人も多いのではないでしょうか。

 

 結論から言うと、エネルギー自体が枯渇して疲労を起こすことは滅多にありません。仕事や運動をして体の疲れを感じるのは、エネルギーが不足したからではないのです。 日本は「疲労大国」と言われ、日本人の約60%は何らかの疲れを感じていることが判明しています。さらに、「半年以上疲労が持続して悩んでいる」人が40%近くも存在するという報告もあります。過労死を意味する「KAROSHI]は英語でもそのまま使われており、2002 年からはオックスフォード英語辞典のオンライン版にも掲載されているほどです。 それほど日本では「疲労」が浸透しているにもかかわらず、一方で、実は、疲労の原因やその科学的なメカニズムはほとんど理解されていないのが現状です。たとえば、あなたは次のような疲労回復説を耳にしたことはありませんか。

 

 

・運動でストレスを発散すると疲れもすっきりとれる。

 

・ニンニク料理、ウナギ、焼肉、栄養ドリンクで疲れは軽減する

 

・休日に人気の温泉地でたっぷりお風呂に入って、疲れをとる

 

・残業の疲れは、楽しくお酒を飲めばリセットできる

 

 

これらはすべて、科学的根拠に裏打ちされているものではありません。それどころか、むしろ疲労を悪化させるリスクのほうが高いことがわかっています。こうした実は根拠のない説を信じてしまい、疲労をどんどん悪化させていることも日常生活の中に非常に多いのです。