「疲労」と「疲労感」は別の現象

疲労とは何かを科学的に理解するにあたり、重要な知見があります。それは、「疲労」と「疲労感」はまったく別の現象である、ということです。

 

 

たとえば、何時間も残業でデスクワークを続ける、マラソン大会で完走する、早朝からゴルフをするなどの場面を想像してください。どの行為も疲労が蓄積することは明らかであり、行為の時間が長くなるほどに刻一刻と疲労感を覚えることと思います。

しかしながら、残業して上司にほめられた、マラソン大会で目標の順位より上位に入った、ゴルフで好スコアが出た場合、「疲労

 

感がふっとんだ」という経験は誰しもあるのではないでしょうか。

 

人は実際には疲労を起こしていても、それを感じるのは脳であるため、脳の複雑な働きによって疲労感を覚えないことがあります。物理的な疲労の程度と、主観的な疲労感は一致しないことが多々あるのです。

 

 

では、なぜ疲労と疲労感にギャップが生じるのでしょうか。疲労を起こすのは、おもに脳内にある自律神経の中枢なのです。そして、「疲労した」という情報を収集して「疲労感」として自覚させるのは大脳の前頭葉にある眼窩前頭野という部位であることがわかっています。